歯のクリーニングで、むし歯や歯周病は予防できるの?
- 2025年6月21日
- 予防・メインテナンス
結論:クリーニングでは不十分。効果的なのは「メインテナンス」です。
日本の「予防歯科」は、本当に予防できている?
日本の多くの歯科医院では、「予防歯科=歯のクリーニング」とされています。
この“クリーニング”とは、以下のような内容です:
-
一律の歯磨き指導
-
歯石除去(スケーリング)
-
歯の表面の研磨(PMTC)
これらは“プロフェッショナルケア”と呼ばれますが、クリーニング直後にむし歯菌や歯周病菌は一時的に減少しても、わずか1〜2時間後には再び増殖を始め、24〜48時間以内に元の数に戻ってしまうとされています。
つまり、クリーニングの効果はわずか2日間しか続かないのです。
ところが、多くの歯科医院ではこのクリーニングを「3ヶ月(90日)ごと」に実施しています。
そうすると、残りの88日間は菌が増え放題の状態ということに。
その結果、定期的にクリーニングに通っていても、
・新たなむし歯ができる
・歯周病が進行し、歯ぐきが下がる
といったことが起きてしまうのです。
スウェーデン式の「メインテナンス」でむし歯が激減
むし歯や歯周病の予防において、世界的に成果を上げているのが「北欧型メインテナンス」です。
スウェーデンをはじめとする北欧諸国の歯科医院では、次のようなステップでメインテナンスを行います:
・歯周病の精密検査
・プラークの染め出し
・リスクに応じたセルフケアの強化(オーダーメイドの歯磨き指導)
・歯石除去・PMTC
・フッ素塗布
これにより、一人ひとりのリスクに応じた個別対応が可能になります。
たとえば、歯科衛生士が次のようなアドバイスをしてくれます:
「右上の奥歯に細菌が多く、歯ぐきから出血があります。中等度の歯周病が進行している状態です。ここにはSサイズの歯間ブラシが適しています。まず1ヶ月試して、改善をチェックしましょう。」
このように、「検査 → 分析 → 対処法の提案 → 経過観察」を繰り返すのが、北欧型のメインテナンスです。
日本型クリーニングと北欧型メインテナンスの違い
以下のグラフをご覧ください:
5年間でできたむし歯の数:日本型では平均4.4本、北欧型では0.2本
このように、北欧型メインテナンスを導入した医院では、むし歯がほとんどできていないという報告があります(Axelsson P et al., 2004, Rosen B et al., 2004)。
まとめ|「クリーニング」ではなく「メインテナンス」へ
「定期的に通っているのに、なぜか新しいむし歯ができてしまう」
「歯周病が進行して、歯ぐきが下がってきた」
そんな方は、クリーニング中心の予防スタイルに限界があるのかもしれません。
これからは、「本当に予防できる方法=メインテナンス」を取り入れている歯科医院を選ぶことが、健康な歯を守るための第一歩です。
引用文献
-
Axelsson P, Nyström B, Lindhe J. The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. J Clin Periodontol. 2004; 31(9): 749–757.
-
Rosen B et al. Effect of different frequencies of preventive maintenance treatment on dental caries: five-years observations in general dentistry patients. Acta Odontol Scand. 2004; 62: 282–288.