兄弟で歯並びが違うのはなぜ?遺伝と生活習慣の意外な関係
- 2026年2月18日
- 小児歯科

目次
「上の子はきれいに並んでいるのに、下の子はガタガタなんです」
「親のどちらにも似ていない気がします」
小さな子どもを育てている保護者の方から、よくいただくご相談です。兄弟なのに歯並びが違うと、「遺伝だから仕方ないのでは?」と考えてしまうかもしれません。
しかし、歯並びは“遺伝だけ”でも“生活習慣だけ”でも決まるものではありません。実際には、遺伝と生活習慣が複雑に関係し合って決まっていきます。
今回は、兄弟で歯並びが違う理由と、今からできる予防について解説します。
歯並びはどこまで遺伝するのか
まず知っていただきたいのは、遺伝するのは「歯並びそのもの」ではないということです。
遺伝の影響を受けやすいのは、次のような要素です。
・あごの大きさ
・歯の大きさ
・骨格の傾向(出っ歯傾向、受け口傾向など)
たとえば、歯が大きくあごが小さい傾向を受け継ぐと、歯が並びきらずガタガタになりやすくなります。逆に、あごが大きく歯が小さいと、すき間ができやすくなります。

兄弟では「歯は父親似」「あごは母親似」といった組み合わせが起こります。その結果、同じ親から生まれても歯並びが違うことは珍しくありません。
さらに、祖父母の特徴が強く出ることもあります。遺伝は“土台”を作る要素であって、“完成形”を決めるものではないのです。
あごの大きさ・歯の大きさと遺伝の関係
永久歯は乳歯よりも大きいという特徴があります。乳歯列では問題なく見えても、永久歯に生え変わる混合歯列期に急にガタガタが目立つことがあります。
これは「歯が大きすぎる」のではなく、「あごのスペースが足りない」ことが原因であることが多いのです。
あごの成長には時間的なピークがあります。そのタイミングを逃さず評価することが重要です。早い段階で骨格的な問題を見つけることができれば、将来的な治療の選択肢も広がります。
生活習慣が歯並びに与える大きな影響
では、生活習慣はどのように関係するのでしょうか。
歯並びは、実は“力のバランス”で決まります。歯は骨に固定されているように見えますが、持続的な弱い力によって少しずつ動きます。
影響を与える代表的な習慣は次の通りです。
・口呼吸
・指しゃぶり
・舌の位置が低い(低位舌)
・頬杖
・うつ伏せ寝
・やわらかい食事中心の生活
同じ家庭でも、これらの習慣の強さや期間が兄弟で違えば、歯並びに差が出ます。

口呼吸・指しゃぶり・姿勢はなぜ問題になるのか
本来、舌は上あごに触れているのが正常な位置です。この舌の力が、上あごを横方向に広げる働きをします。
しかし、口呼吸が続くと舌は下に落ち、上あごを支えなくなります。その結果、上あごが横に広がらず、歯列が狭くなりやすくなります。
指しゃぶりは前歯を前方に押し出します。長期間続けば、開咬や出っ歯の原因になります。
姿勢も重要です。猫背になると下あごの位置が変化し、かみ合わせに影響を及ぼします。
歯並びは「口の中だけの問題」ではなく、呼吸や姿勢など全身の影響を受けているのです。
同じ家庭でも差が出る理由
「同じ家庭で育ったのに」と思われるかもしれませんが、実は兄弟は“同じ環境”ではありません。
・授乳期間の違い
・離乳食の進め方
・感染症の既往
・鼻炎やアデノイド肥大の有無
・指しゃぶりをやめる時期
こうした小さな違いの積み重ねが、成長の方向性に影響します。
生まれた順番によっても、生活リズムや食習慣は微妙に変わります。兄弟で差が出るのは自然なことなのです。
乳歯列期からできる歯並び予防
歯並びの管理は、永久歯が生えそろってから始めるものではありません。
3歳頃までに確認しておきたいポイントがあります。
・鼻で呼吸できているか
・口がいつも開いていないか
・舌の位置は正常か
・よく噛んで食べているか
・姿勢は整っているか
歯科医院は、むし歯を治すだけの場所ではありません。あごの成長を評価し、将来を見据えて管理する場所でもあります。
早く気づくことは不安ではなく、チャンスです。

矯正治療が必要になるケースとは
すべての歯並びが矯正治療を必要とするわけではありません。
しかし、次のような場合は早めの相談をおすすめします。
・明らかな受け口
・著しいガタガタ
・交叉咬合
・開咬
・永久歯が並ぶスペースが明らかに不足している場合
成長を利用できる時期に介入できると、治療の負担を軽減できる可能性があります。
一方で、生え変わり途中の一時的なガタつきであれば、経過観察でよい場合もあります。
兄弟比較で悩む保護者へ

兄弟で歯並びが違うことは、決して珍しいことではありません。
大切なのは、「どちらが正しいか」ではなく、「その子の成長が健全かどうか」です。
生活習慣は、今からでも変えられます。鼻呼吸を意識する、姿勢を整える、しっかり噛む習慣をつける。家族全体で取り組むことが最も効果的です。
歯並びは見た目だけの問題ではありません。呼吸、姿勢、将来の健康にも関わります。
早めに評価し、その子に合った成長のサポートをしていくことが、将来への大きな健康投資になります。
兄弟で違いがあることは、問題ではありません。
気づいた今が、はじめどきです。
