口呼吸が歯と身体に与える影響
- 2025年12月18日
- その他

目次
口呼吸とは?本来の呼吸との違い
自然界の動物たちは、基本的に鼻で呼吸しています。そして私たち人間も例外ではなく、本来の呼吸は「鼻呼吸」です。鼻は呼吸の通り道として、空気中のウイルスや細菌、ホコリをろ過し、加湿・加温する重要な役割を担っています。一方、口呼吸とは、無意識のうちに口で呼吸をしている状態を指します。
一時的に口呼吸になること自体は珍しくありませんが、日常的に口が開いたままになっている場合、歯や歯ぐき、さらには身体全体にさまざまな悪影響を及ぼします。
口呼吸が増えている背景(現代人・子どもの生活習慣)
近年、口呼吸をしている人は大人・子どもを問わず増加傾向にあります。その背景には、
・アレルギー性鼻炎や慢性的な鼻づまり
・柔らかい食事による口周りの筋力低下
・長時間のスマホ・タブレット使用による姿勢不良
・口周りの発達不足や生活リズムの乱れ
など、現代ならではの生活習慣が大きく関係しています。特に成長期の子どもでは、口呼吸が「当たり前の癖」として定着してしまうケースも少なくありません。
実際当院に来院するお子さん達を観察していると、ほとんどのお子さんが口呼吸をしていたり、お口ポカンの状態であることに気付かされます。
口呼吸が歯に与える影響
口呼吸が起こす問題の一つは、口の中が乾燥しやすくなることです。唾液には、
・むし歯菌の働きを抑える
・歯を修復(再石灰化)する
・細菌を洗い流す
といった重要な役割があります。口呼吸によって唾液の働きが弱まると、歯の表面が常に細菌にさらされやすくなり、歯の健康が損なわれていきます。
口呼吸とむし歯・歯周病の深い関係
口呼吸の方は、むし歯や歯周病のリスクが明らかに高くなります。乾燥した口腔内ではプラーク(細菌の塊)が付着しやすく、歯ぐきの炎症も起こりやすくなります。
特に、
・前歯がむし歯になりやすい
・歯ぐきが赤く腫れやすい
・口臭が気になる
といった症状がある場合、背景に口呼吸が隠れていることも少なくありません。治療だけでなく、呼吸の仕方そのものを見直すことが重要です。
口呼吸が歯並び・かみ合わせに及ぼす影響
口呼吸は、歯並びや顎の成長にも大きな影響を与えます。口が常に開いている状態では、舌が本来あるべき上あごに接触せず、頬や唇の筋肉の圧力バランスも崩れます。
その結果、
・出っ歯
・開咬(奥歯は噛んでいるが前歯が閉じない)
・歯列の狭窄
などが起こりやすくなります。歯並びの問題は見た目だけでなく、噛む・話す・飲み込むといった機能にも影響します。
子どもの口呼吸が将来に残すリスク

子どもの頃の口呼吸は、将来にわたるリスクを残します。顎や顔の骨は成長途中であるため、呼吸の癖がそのまま骨格の形成に影響してしまうのです。
また、歯並びが乱れることで、
・むし歯や歯周病になりやすい
・矯正治療が必要になる可能性が高まる
・コンプレックスにつながる
といった問題も生じやすくなります。早い段階で気づき、正しい呼吸へ導くことが将来の負担を減らします。
口呼吸が身体全体に与える影響(免疫・睡眠・集中力)
口呼吸の影響はお口の中だけにとどまりません。鼻呼吸によるフィルター機能が使われないことで、ウイルスや細菌が直接体内に入りやすくなり、風邪をひきやすくなる傾向があります。
さらに、
・いびきや睡眠の質の低下
・日中の集中力低下
・慢性的な疲労感
など、全身の健康にも影響を及ぼします。子どもの場合、学習面や行動面への影響が指摘されることもあります。
大人でも起こる口呼吸の問題点
「子どもの問題」と思われがちな口呼吸ですが、大人でも注意が必要です。ストレスや姿勢不良、加齢による筋力低下により、後天的に口呼吸になるケースもあります。
歯周病が進行しやすい、治療しても再発しやすい場合や、「昔より歯並びが悪くなってきた」と感じる場合は、呼吸習慣の見直しが重要なポイントになることもあります。
口呼吸かどうかをチェックする簡単セルフチェック

以下に当てはまる項目が多い場合、口呼吸の可能性があります。
・無意識に口が開いている
・朝起きたときに口が乾いている
・前歯がむし歯になりやすい
・口臭を指摘されたことがある
・いびきをかく
気になる場合は、早めに歯科医院へ相談することをおすすめします。
口呼吸を改善するためにできること
口呼吸の改善には、原因に応じた対応が必要です。
・鼻の問題がある場合は耳鼻科との連携
・姿勢や生活習慣の見直し
・口周りの筋機能トレーニング
特に子どもでは、成長を利用したアプローチ(マイオブレース)が効果的な場合もあります。
歯科医院でできる口呼吸へのアプローチ
歯科医院では、歯や歯ぐきの治療だけでなく、口呼吸の原因評価や予防的アプローチも可能です。歯並びや舌の位置、噛み合わせを確認し、必要に応じて専門的なトレーニングや装置を提案します。
口呼吸の改善は、むし歯や歯周病を「治す」だけでなく、「繰り返さない」ための重要な視点です。
まとめ:口呼吸を見直すことは「予防歯科」の第一歩
口呼吸は、気づかないうちに歯と身体の健康をむしばんでいきます。逆に言えば、呼吸を整えることは、むし歯・歯周病・歯並びのトラブルを予防する大きな一歩です。
「何度も治療を繰り返している」「子どもの歯並びが気になる」
そんな方こそ、一度“呼吸”に目を向けてみてください。
