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医療コラム

子どもが歯磨きを嫌がる。どうすれば良い?|もりわき歯科|芦屋駅すぐの歯科・歯医者

子どもが歯磨きを嫌がる。どうすれば良い?


はじめに

子どもの「歯磨きイヤイヤ期」は、成長過程でほとんどの家庭に訪れる自然な現象です。

しかし、泣いたり逃げたりする子どもを前に、つい親が焦って無理やり磨こうとすると、歯磨きが“嫌な記憶”になり、ますます抵抗を強めてしまうことがあります。

大切なのは、「なぜ嫌がっているのか」という原因を理解することです。

そして、その理由に応じた対応をすることで、子どもの“イヤイヤ”は驚くほど減っていきます。

ここでは、理由別・年齢別の対応方法に加え、完璧に磨けなくてもむし歯を防ぐ考え方、さらに「このサインが出たら受診した方が良い」というデッドラインも紹介します。


理由別:歯磨きを嫌がる子どもへの対応

① 痛くて嫌がる場合

歯磨きを嫌がる原因の中で最も多いのが「痛み」です。

痛みの原因には、磨く力が強すぎる、上唇小帯(前歯の上のすじ)にブラシが当たる、あるいは歯茎をこすってしまっていることが考えられます。

まず、歯ブラシの圧力を確認しましょう。

料理用スケールで計ると、200〜250g程度が適正圧とされています。

思っているよりも軽い力で十分に汚れは落とせます。

上唇小帯は、歯ブラシを持っていない方の指でやさしく排除し、毛先が当たらないようにします。

また、よく見えないまま磨くと歯茎に当たりやすいため、頬を指でよけて視野を確保すると、痛みを防げます。

子どもが痛がるときは「力を抜いて」「見えるように」「声をかけながら」が基本です。


磨かれるのを嫌がる場合

「触られるのが苦手」「歯ブラシの感触が嫌い」という子どももいます。

そのような場合、いきなり歯ブラシを使うのではなく、ガーゼで軽く拭うことからスタートしましょう。

慣れてきたら、自分で歯ブラシを持たせ、親が一緒に磨いてあげるとスムーズです。

また、すぐ飽きてしまうタイプの子どもには次の工夫が効果的です。

・話しかけながら気をそらす

・音楽や動画をかけてリラックスさせる

・砂時計やタイマーで「いつ終わるか」を見える化する

特に小さな子どもは「終わりが見えないこと」に不安を感じやすいもの。

時間の見通しを持たせるだけで、歯磨きへの抵抗感が軽減します。


年齢別:「歯磨きイヤイヤ」への対応

【1〜2歳】慣れることが目的

この時期は、しっかり磨くよりも「口の中に歯ブラシを入れる」ことに慣れるのが目標です。

親が膝に寝かせて短時間で終わらせ、嫌がらなかったら褒めてあげましょう。

【3〜4歳】「自分でしたい」を尊重

自我が芽生える年頃。「自分で磨く!」という気持ちを尊重し、最初は本人に磨かせ、仕上げ磨きで補いましょう。

「ママ(パパ)と一緒にピカピカ競争しよう」など、遊びの要素を加えると効果的です。

【5歳以上】目的意識を育てる

歯の健康に関心を持ち始める時期。「むし歯になると痛い」「きれいな歯で笑うと気持ちいい」など、自分事として話してあげましょう。

子どもが「磨く理由」を理解できるようになると、習慣はぐっと定着します。


歯磨きを習慣化する工夫

歯磨きを“努力”ではなく“習慣”にするには、生活リズムの中に自然に組み込むことが大切です。

たとえば「お風呂から出て髪を乾かしたら歯磨き」というように、行動の流れの中で“トリガー(合図)”を決めましょう。

また、心理的なハードルを下げることもポイントです。

「3分磨こう」ではなく、「まずは歯ブラシに歯磨き粉をつける」といった“最初の一歩”を小さくすると続けやすくなります。

さらに、子どもは親の真似をして育ちます。

親が鏡の前で丁寧に歯を磨く姿を見せると、子どもは自然と「歯磨きって大事なんだ」と感じるようになります。

歯磨きは“しつけ”ではなく、“親子のコミュニケーション”の時間として捉えましょう。


完璧に磨かなくても大丈夫な理由

「どうしても嫌がって、毎日完璧には磨けない…」

そんな保護者の方も多いでしょう。

でも大丈夫。むし歯予防で最も効果的なのは、フッ化物(フッ素)の応用だからです。

フッ素入り歯磨き粉を毎日使うことで、歯の表面は酸に強くなり、初期のむし歯であれば再石灰化して元に戻ることもあります。

つまり、磨き残しが少しあっても、フッ化物をしっかり使っていれば予防効果は十分に得られるのです。

この30年間で、子どものむし歯は大幅に減少しました。

厚生労働省「歯科疾患実態調査」によると、12歳の永久歯むし歯経験歯数(DMFT)は、

1993年には1人あたり3.6本だったのに対し、2022年には0.3本と、実に約92%減少しています。

この背景には、フッ化物入り歯磨き粉の普及と定期的な歯科受診が挙げられます。

つまり、「毎日フッ素を使う」「定期的にプロケアを受ける」ことが、完璧な歯磨きよりもむし歯予防に効果的だとわかっています。

疲れた日や時間がない日も、「フッ素だけは塗っておこう」。

それだけで十分立派な予防行動です。

むし歯予防は、“完璧”よりも“継続”が何より大切です。


受診のサイン

「ちゃんと磨けていないかも」「これって大丈夫?」

そんな不安を感じたら、次のような兆候がないか確認しましょう。

・歯の表面が白く濁っていて、歯ブラシでは落ちない(初期むし歯のサイン)

・歯ぐきが腫れていたり、磨くと出血する(歯肉炎のサイン)

・口臭が強い(歯肉炎やプラーク停滞のサイン)

口臭は誰にでもありますが、「いつもと違う匂い」を感じたときは要注意です。

早めに受診すれば、治療せずに経過観察で済むケースも多くあります。


歯並び・お口の癖にも注目(マイオブレース)

「磨いているのに汚れが取れない」「歯茎がよく腫れる」という場合、歯並びや口の癖が関係していることもあります。

特に生え変わり期は歯がガタガタして磨きにくく、汚れが残りやすくなります。

また、口が常に開いている“お口ポカン”の状態では、唾液が減って歯の表面が乾燥し、汚れが落ちにくくなります。

こうした場合は、筋肉の使い方を整える小児予防矯正(マイオブレース)のような治療で、口の機能を改善するのも有効です。


まとめ

歯磨きを嫌がるのは、ほとんどの子どもにある自然な反応です。

怒ったり焦ったりせず、まずは“なぜ嫌がるのか”を理解すること。

そのうえで、フッ化物を上手に活用し、完璧を求めすぎずに続けていくことが大切です。

そして、子どもは親をよく見ています。

親が楽しそうに歯磨きをして、定期的に歯科医院でチェックを受けている姿は、何よりの教育になります。

今日の小さな習慣が、子どもの一生の健康を守ります。


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