子どもが歯磨きを嫌がる理由は“性格”じゃない?発達段階から考える対処法
- 2026年2月11日
- 小児歯科

目次
「うちの子は本当に頑固で…」
「毎日歯磨きの時間が戦争です」
診療室で、こうした声をよく耳にします。
むし歯にさせたくない。
将来困らせたくない。
そう思えば思うほど、歯磨きの時間に力が入ってしまうものです。しかし、子どもが歯磨きを嫌がるのは、性格の問題なのでしょうか。
実は、多くの場合そうではありません。そこには“発達段階”という視点が大きく関係しています。
なぜ子どもは歯磨きを嫌がるのか?よくある誤解
子どもにとって歯磨きは、「意味が分からない不快な時間」です。
・口の中に突然物が入ってくる
・動きたいのに体を止められる
・早く終わらせたいのに大人が真剣になる
大人は「むし歯予防」という目的を理解していますが、幼い子どもは将来のリスクという概念をまだ理解できません。目の前の“快・不快”がすべてです。
ですから、嫌がるのは自然な反応なのです。
歯磨き嫌いは“性格”ではなく発達段階の問題
子どもの脳はまだ発達途中です。感情をコントロールする前頭前野は未熟で、「嫌だ」と感じたらそのまま行動に出ます。
特に2〜3歳頃のいわゆる“イヤイヤ期”は、自立心が芽生える重要な時期です。
「自分でやりたい」
「自分で決めたい」
この欲求が強くなるのは、成長の証です。歯磨きを拒否するのも、“自分の意思を持ち始めた”サインとも言えます。
叱るよりも、「今はこういう発達段階なんだ」と理解することが、親の心を楽にします。
年齢別:歯磨きを嫌がる理由と対応法
0〜1歳
口周りは非常に敏感です。まずはスキンシップの延長として、ガーゼややわらかいブラシで優しく触れることから始めましょう。笑顔や歌を取り入れると、安心感が生まれます。
2〜3歳

自立心が爆発する時期です。
「どっちから磨く?」
「赤い歯ブラシにする?青にする?」
小さな選択肢を与えることで、主体性を満たせます。また、最初に本人に磨かせてから仕上げ磨きをする方法も有効です。
(筆者も現在3歳の娘がいます。時間に追われて、作業のように一方的に磨いてしまうこともあります。それでも、娘が「自分でやりたい」と言ってくる時もあり、そのような成長の瞬間を大切にしなければと気付かされます。)
4〜6歳

理解力が高まります。バイキンをやっつける物語にしたり、タイマーを使ったりするのも効果的です。
できている部分を具体的にほめることが、自信につながります。
できているかどうか分からないという方は、お口の中の細菌をピンク色に染める「染め出し」をおすすめします。
(当院では、お家でも使いやすい綿棒タイプをご用意しております。)
イヤイヤが強くなる3つの背景
① 感覚の問題
口の中は非常に繊細です。歯ブラシの硬さや当て方が合っていない可能性もあります。
② 自立心の発達
コントロールされることへの抵抗は自然な成長過程です。
③ 成功体験不足
毎回怒られて終わると、「歯磨き=嫌な時間」と学習してしまいます。
問題は子どもではなく、環境や関わり方にあることも少なくありません。
無理やりは逆効果?親子関係を守る関わり方
仕上げ磨きで押さえる方法は、短期的には効果があります。むし歯予防の観点では必要な場面もあるでしょう。
しかし、毎回強い緊張状態で行うと、「歯磨き=怖い」という印象が残ることもあります。
大切なのはバランスです。
・毎日100点を目指さない
・機嫌が良いタイミングを選ぶ
・今日は前歯だけでもOKと割り切る
実際のところ、きれいに磨くことよりも、フッ素入りの歯磨き粉を毎日使うこと自体の方が、むし歯予防の効果が高いことがわかっています。
そうです。むし歯に関しては、完璧に磨くこと<フッ素入り歯磨き、なのです。
この事実を知っていただくだけでも、ハードルが下がったのではないでしょうか。
明日から100点の歯磨きにならなくて良い、少しずつ上達すれば良い。
完璧よりも継続です。

予防型歯科ができるサポート
歯科医院は、家庭の努力を評価する場所でもあります。
「よく頑張っていますね」
「ここ、とてもきれいに磨けていますよ」
こうした評価が、親御さんの安心につながります。
また、リスクに応じたフッ素活用や定期管理により、「家庭で完璧に磨けなくても大丈夫」という環境を整えることも可能です。
歯磨きは、家庭だけで抱えるものではありません。
まとめ:歯磨きは“戦い”ではなく“成長のプロセス”
嫌がるのは、わがままだからではありません。
自立心が育っている証です。
今日うまくいかなくても、明日は少し前進するかもしれません。
歯磨きの時間は、実は子どもの自己効力感を育てるチャンスでもあります。
「できたね」
「昨日より上手になったね」
その積み重ねが、やがて自分から歯ブラシを持つ力になります。
歯磨きは、むし歯予防のためだけの時間ではありません。
親子が一緒に成長する時間でもあるのです。
