更年期とお口のトラブル:ホルモンバランスが歯ぐきやドライマウスに与える影響
- 2025年11月23日
- その他

目次
はじめに:更年期とお口の変化はなぜ起きるのか
40〜50代に差し掛かると、多くの女性が「お口の調子が以前と違う」と感じ始めます。
具体的には、歯ぐきが腫れやすい、口が乾く、口臭が気になる、むし歯が増えた気がする…といった変化です。
その背景には、更年期に起こるホルモンバランスの大きな変化が影響しています。
とくに、卵巣ホルモンである エストロゲン の減少は全身の症状だけでなく、お口の環境にも直結します。
お口は、血管・粘膜・神経・免疫細胞など多くの組織で構成されており、ホルモンの影響を受けやすいデリケートな部位です。
そのため、更年期のホルモン変動がダイレクトに表れやすく、「最近トラブルが増えた」という違和感の正体が更年期の変化であることは珍しくありません。
このコラムでは、更年期とお口のトラブルの関係をわかりやすく解説しながら、日常のケアや歯科で行える対策について詳しくお伝えします。
更年期に増えるお口のトラブルとは
更年期には次のようなお口のトラブルが増える傾向があります。
● 歯ぐきの腫れ・出血
炎症が起こりやすく、ブラッシング時に出血しやすい。
● ドライマウス(口腔乾燥)
「朝起きると口の中がカラカラ」「飲み込みにくい」という症状が代表的。
● 口臭の増加
唾液が減ることで細菌が増え、においが発生しやすくなる。
● むし歯・歯周病のリスク増加
自浄作用が落ちるため、今までと同じケアでは守りきれなくなる。
● 口内炎・粘膜の痛み
粘膜が薄くなり、刺激に弱くなる。
生活習慣の変化やストレス、睡眠不足が重なり、症状が強く出ることもあります。
エストロゲン低下が歯ぐきに与える影響
更年期の代表的な変化のひとつが、歯ぐきのトラブルです。
1. 血流の低下
エストロゲンは血管を守る働きを持ちます。
そのため、減少すると歯ぐきの血流が低下し、酸素や栄養が届きにくくなり炎症が起こりやすくなります。
2. 歯肉の防御力の低下
細菌に対抗する力が弱くなり、軽い汚れでも炎症へとつながりやすくなります。
3. 歯周病が進行しやすくなる
もともと歯周病は細菌と免疫バランスの影響を強く受ける病気ですが、更年期はそのバランスが崩れやすく、進行が早まるケースがあります。
4. ホルモン性歯肉炎との違い
妊娠中のホルモン性歯肉炎は「炎症は強いが治りやすい」のが特徴。
一方、更年期では慢性的になりやすく、適切なケアがないと深刻化する可能性があります。
なぜ更年期はドライマウスが起きやすいのか
更年期の方が最も自覚しやすい症状のひとつが「お口の乾き」です。
● 唾液腺の働きが低下する
エストロゲンの減少は唾液腺にも影響し、唾液量が減りやすくなります。
唾液は、お口の健康を守るうえで欠かせない存在です。
● 唾液が減ると何が起きる?
・むし歯が増える
・歯周病が悪化しやすい
・口臭が出る
・食べ物が飲み込みにくい
・舌や粘膜がヒリヒリする
特に就寝中は唾液分泌が減るため、乾燥が強く出やすく、朝の不快感や口臭の原因にもなります。
● マスク・ストレス・口呼吸などの影響
更年期は自律神経が乱れやすく、ストレスや緊張で口呼吸になることがあります。
これも乾燥を悪化させる大きな要因です。
更年期とむし歯・歯周病リスクの関係
更年期の口腔環境は、むし歯や歯周病が進行しやすい状態になっています。
1. 唾液の自浄作用低下
唾液は細菌を洗い流し、むし歯の進行を抑える役割を持っています。
減少すると、むし歯の初期段階が短期間で進むことがあります。
2. 再石灰化の力が弱くなる
通常、むし歯になりかけても唾液のミネラルが歯を修復してくれますが、唾液が減るとその自然修復力が発揮されません。
3. 歯周病菌の増殖
乾燥と免疫の低下により、歯周病菌が増えやすくなります。
4. 歯ぐき下がり・知覚過敏
歯ぐきが炎症で下がると象牙質が露出し、冷たいものがしみる症状が出ます。
更年期と口臭の関係
口臭が急に気になり始めた、という方も少なくありません。
● ドライマウス由来の口臭
唾液が減る → 細菌が増える → 揮発性硫黄化合物が発生 → 口臭
この流れで口臭が強まりやすくなります。
● 歯周病が進行しているケースも多い
歯周ポケットが深くなると、臭いの強いガスが発生しやすくなります。
● ストレス・自律神経の乱れ
更年期は自律神経が乱れやすく、唾液分泌の低下と密接に関係しています。
放置するとどうなる?長期的なリスク
● 歯周病が進行して歯が揺れやすくなる
● 歯を失うリスクが上がる
● むし歯が増え、詰め物や被せ物が壊れやすくなる
● 口臭が増し、日常生活のQOLが低下
● 入れ歯・矯正装置・インプラント周囲の炎症が生じやすい
● 糖尿病・骨粗鬆症など全身疾患との関連が強まる
更年期は生活の変化も多く、気づかないうちに進行してしまうケースが少なくありません。
更年期のお口トラブルにできる対策
■ 自宅でできるセルフケア
・丁寧な歯磨き(歯ブラシ+フロス・歯間ブラシ)
・フッ化物入り歯磨き粉の使用
・口腔保湿ジェル・スプレーの活用
・こまめな水分補給
・キシリトールや唾液分泌を促すタブレット
・舌の保湿・舌のストレッチ
・栄養のバランス(タンパク質・ビタミン類)
・睡眠・ストレスマネジメント
とくに “乾燥対策” は毎日の小さな積み重ねが重要です。
■ 歯科でできるプロフェッショナルケア
・歯周病の精密検査(プロービング・X線・リスク評価)
・バイオフィルム除去
・歯石除去
・フッ化物塗布
・ドライマウス治療(保湿剤・刺激療法・生活指導)
・治療後のメインテナンス
(※スウェーデン式予防プログラムを応用)
更年期は「以前より一段階細かい予防ケア」が必要になる時期です。
更年期女性に特有の注意点とQ&A
Q:急に歯ぐきが下がってきた気がするのはなぜ?
A:炎症による組織の破壊が進みやすく、歯周病のスピードが上がることがあります。
Q:唾液がねばつく・飲み込みにくいときの対処法は?
A:保湿ジェルの活用、鼻呼吸の習慣化、こまめな水分補給、唾液腺マッサージが有効です。
Q:仕事・家庭・ストレス…更年期の影響は?
A:ストレスが強いと唾液が減少し、お口のトラブルが一層起こりやすくなります。
当院での更年期に特化したお口のケアの流れ
当院では、以下の流れで更年期特有のお口の変化を丁寧に診断します。
1. 初診カウンセリング
生活習慣・更年期症状・お口の困りごとを丁寧にヒアリング。
2. 歯周組織検査とむし歯リスク評価
BOP・PCR・X線などによる精密分析。
3. ドライマウス評価
乾燥の強さや舌の状態、生活習慣を総合的に評価。
4. 予防先進国スウェーデンの考え方を取り入れたメインテナンス設計
患者さん一人ひとりに合わせたリスク管理とケア計画を作成。
5. 長期的な健康維持のサポート
お口の変化が出やすい更年期こそ、「予防型の通院」がおすすめです。
まとめ:更年期は「お口の健康再スタート」のタイミング
更年期のお口のトラブルは、ホルモン変動に伴う自然な変化です。
しかし、正しいケアと歯科でのサポートにより、お口の環境は大きく改善します。
・更年期は歯ぐき・唾液・口臭などの変化が出やすい
・むし歯・歯周病のリスクが高くなる
・予防とメインテナンスが今まで以上に重要
・乾燥対策、フッ化物応用、プロのケアで大きく改善が期待できる
お口の健康は、全身の健康と密接に関連しています。
「最近気になる変化がある」という方は、早めにご相談ください。
