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医療コラム

歯が割れる人が増えている?|もりわき歯科|芦屋駅すぐの歯科・歯医者

歯が割れる人が増えている?


歯が割れる人が増えている?

「突然、歯が割れた」「何もしていないのに歯がダメになった」

最近、このような相談を受ける機会が確実に増えています。

実は、歯が割れる(クラック)ことは決して珍しいトラブルではなく、近年とくに増加傾向にあります。

背景には、ストレス社会による歯ぎしり・食いしばり、治療済みの歯の長期使用、高齢化など、現代ならではの要因が関係しています。

歯が割れることは、単なる「歯のトラブル」ではなく、歯を失うリスクにつながる重要なサインでもあります。

 

ちなみに、日本人が歯を失う原因の約80%がむし歯・歯周病であり、歯の破折で失うのは15%程度とわかっています。

ただし、歯の破折はむし歯が原因で根菅治療(歯の神経の治療)をした歯に起こることが圧倒的に多いです。

つまり、歯の破折も、そもそもの始まりはむし歯ということです。

当院のように予防を徹底している歯科医院では、むし歯・歯周病になるリスクが低下し、失う歯の本数自体が激減します。

減少した喪失歯数の中で高い割合を占めるのが、歯の破折です。

むし歯・歯周病を予防した先には、歯の破折が抜歯となる原因として大きなウエイトを占めるようになるのです。


「歯が割れる」の正体 ― クラックとクレイズラインの違い

一口に「歯が割れる」と言っても、実際にはいくつかの状態があります。

クラック(crack)

歯の内部まで及ぶヒビ割れ。症状が出たり、歯髄(神経)に感染が及ぶことがあります。

歯の破折

歯の一部が欠けたり、大きく割れた状態。

歯根破折

歯の根の部分が割れる状態で、抜歯が必要になるケースが多くなります。

クレイズライン

エナメル質表面だけに見られる細いヒビ。多くの場合、問題を起こしません。

とくに注意が必要なのが、見た目では分かりにくいクラックです。

症状が軽いために放置され、知らないうちに重症化してしまうことがあります。


クラックは歯を失う危機?近年注目される歯髄感染との関係

近年、歯科界で注目されているのが、

クラックを原因とした歯髄感染(神経の炎症・感染)です。

歯にヒビが入ることで、そこから細菌が侵入し、

・しみる

・噛むと痛い

・何となく違和感がある

といった症状が現れます。

進行すると、神経を守れず根管治療や抜歯が必要になることもあります

つまりクラックは、歯牙喪失の入り口になり得る状態なのです。


ストレス・歯ぎしり・食いしばりが生む“見えない力”

クラックの大きな原因の一つが、

歯ぎしり・食いしばりなどのパラファンクション(無意識の癖)です。

・就寝中の歯ぎしり

・日中の食いしばり

・ストレス時の噛みしめ

これらにより、歯には食事中とは比べものにならない強い力が、

しかも繰り返し加わります。

この「繰り返される異常な力」が、歯に少しずつヒビを入れていくのです。


40〜60代男性にクラックが増える理由

臨床的には、40〜60代の男性でクラックが増える傾向が指摘されています。

理由としては、

・長年のストレス蓄積

・歯ぎしり・食いしばりの習慣

・過去に治療を受けた歯が多い

・咬合力(噛む力)が強い

などが重なり合っていると考えられています。

「これまで問題なく使えていた歯」が、

ある日突然トラブルを起こす背景には、こうした長年の負荷があります。


「噛むと痛い」「硬い物で痛む」「しみる」――見逃してはいけない初期サイン

クラックの早期発見で、非常に重要なヒントになるのが、

患者さん自身の訴えです。

・特定の歯で噛むと痛い

・硬い物を噛んだときだけ痛む

・一瞬しみる感じがする

これらは、クラックの初期サインであることが少なくありません。

メインテナンス時などに、

「たいしたことはないけれど…」と感じている違和感こそ、

歯を守るための大切な情報になります。


クラックの診断はどう行う?視診・透照・染色と患者さんの訴え

クラックの診断には、いくつかの方法を組み合わせます。

・マイクロスコープによる拡大視診

・複数方向から光を当てる透照診

・染色液によるヒビの可視化

しかし、どれほど診断技術が進んでも、

患者さんの症状の訴えは、最も重要な手がかりの一つです。

「噛むと痛い」という一言が、

歯を救う分かれ道になることもあります。


クラック=抜歯・根管治療ではない ― 早期介入の考え方

「歯にヒビがある」と聞くと、

抜歯や根管治療(歯の神経の治療)を覚悟される方も多いかもしれません。

しかし、クラックが見つかったからといって、必ず重い治療が必要になるわけではありません

重要なのは、

・クラックの深さ

・症状の程度

・歯髄の状態

を正確に評価し、早期に適切な介入を行うことです。


クラック歯に対するクラウン治療の科学的根拠

近年の報告では、

可逆性の歯髄炎(歯の神経の炎症のうち、回復可能なケース)を伴うクラック歯にクラウン(被せ物)による全部被覆(歯を全体をすっぽり覆うこと)を行うことで、約80%のケースで根管治療を回避できた

とされています。

すべてのクラック歯に根菅治療は必要ではありません。

被せものをするだけで歯を守ることができるということです。

咬合を確認し、必要に応じて咬合調整を行い、

歯に繰り返しかかる力を減らすことで、歯の寿命を延ばすことが可能になります。


まとめ:歯を割らないために、そして割れても守るために

歯が割れるリスクは、

誰にでも起こり得る現代的な問題です。

しかし、

・早期の気づき

・適切な診断

・ためらわない早期介入

によって、歯を守れる可能性は大きく広がります。

まして、むし歯・歯周病をきちんと予防できている人にこそ、その重要性は大きいのかもしれません。

定期検診やメインテナンスの場で、

小さな違和感を遠慮なく伝えることが、

歯を長く使い続けるための第一歩です。


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