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医療コラム

歯ぐき下がり(歯肉退縮)はなぜ起こる?|もりわき歯科|芦屋駅すぐの歯科・歯医者

歯ぐき下がり(歯肉退縮)はなぜ起こる?


はじめに:歯ぐきが下がると何が起きるのか

鏡を見たときに「歯が前より長く見える」「歯の根元がしみる」と感じた経験はありませんか?

これらは、多くの場合 歯ぐき下がり(歯肉退縮) によって起こる症状です。

歯ぐきが下がると見た目の変化だけでなく、むし歯や歯周病のリスク増加、知覚過敏、咬合の不調和といった問題にもつながります。

しかも、歯ぐきは一度下がると自然に元へ戻ることはほとんどありません。

そのため、「早期に気づき、進行を止める」 ことがとても重要です。

この記事では、歯ぐきが下がる原因、放置するリスク、予防方法、そして治療法まで、分かりやすく丁寧に解説します。


歯ぐき下がり(歯肉退縮)とは?どこからが異常なのか

歯ぐき下がりとは、歯を支える歯周組織が減り、歯の根の部分が露出した状態を指します。

歯ぐきは本来、歯の根を覆い外部刺激から守る役割を担っています。

しかし、何らかの理由で歯ぐきが退縮すると、根面がむき出しになり、

・冷たいもの・甘いものがしみる

・根面むし歯ができやすい

・見た目が老けて見える

・歯が揺れやすくなる

といった問題が起こりやすくなります。

また、歯ぐきが下がって見える状態の中には、生理的な加齢変化による軽度の退縮も含まれますが、明らかな左右差がある、急に症状が出た、知覚過敏が強いなどは、病的な退縮の可能性が高く注意が必要です。


歯ぐき下がりの主な原因

歯ぐきが下がる原因はひとつではなく、複数が重なって起こることも珍しくありません。

ここでは代表的な4つの原因を紹介します。

(1)強すぎるブラッシング(オーバーブラッシング)

意外に多いのが、歯を一生懸命磨きすぎているケースです。

大きく力を入れて横磨きを続けると、歯ぐきが物理的に削られ、徐々に退縮が進みます。

硬めの歯ブラシの使用や、研磨剤の強い歯磨き粉を毎日ゴシゴシ使う習慣もリスクを高めます。

ポイントは、

「力ではなくテクニックで磨く」

ことです。

(2)歯周病(歯周組織の破壊)

日本人が歯を失う最大の原因である「歯周病」は、歯ぐき下がりの最重要因子でもあります。

歯周病が進むと歯を支える骨が減り、それに伴って歯ぐきも下がっていきます。

歯ぐきの腫れや出血だけでなく、「気づかない間に進行しているタイプ」も多いため、定期的な検査が欠かせません。

(3)噛み合わせ・歯ぎしり・くいしばり

毎日の歯ぎしりや強い咬合力は、歯根膜や歯槽骨に過剰な力をかけます。

その結果、骨がじわじわと吸収し歯ぐきが下がることがあります。

特に以下のサインがある方は要注意です:

・朝起きると顎が疲れている

・歯がすり減っている

・ナイトガードを勧められた経験がある

(4)加齢による組織変化

年齢に伴い歯ぐきは下がりやすくなります。

これは生理的変化の範囲で異常ではありません。

しかし、急激な退縮や片側だけが下がっている場合は、別の原因が隠れている可能性があります。


歯ぐき下がりを放置すると起きるリスク

歯ぐき下がりを“見た目だけの問題”と考えて放置するのは危険です。

知覚過敏の悪化

露出した歯根は、刺激に非常に弱い構造です。

放置するとしみる症状が強くなるだけでなく、「噛んだだけで痛い」ほど悪化することもあります。

根面むし歯のリスク増大

歯の根の部分は、表面が柔らかくむし歯になりやすい(=根面むし歯)。

進行速度も速いため、早期発見とケアが重要です。

歯の寿命が短くなる可能性

進行した歯ぐき下がりは、歯周病の進行や噛み合わせの異常を示すサインであることが多く、最終的に歯の揺れや脱落につながることがあります。


自分でできる歯ぐき下がりのセルフチェック

以下の項目に1つでも当てはまれば、歯ぐき下がりの可能性があります。

□ 歯が以前より長く見える

□ 歯の根元が黄色く見える

□ 冷たいものがしみる

□ 歯ブラシの毛先がすぐ開く

□ 唇側だけ歯ぐきが下がっているところがある

□ 歯周病の治療歴がある

気づいた時点で歯科医院に相談するのが最善です。


歯ぐきを守るためのセルフケア方法

歯ぐき下がりは完全に元へ戻すのが難しいため、「進行させないケア」が最重要になります。

ここでは、今日からできる正しいセルフケアをまとめます。

(1)力を入れずに磨く(100〜150gの力)

歯ブラシを持つときは鉛筆持ちにし、軽い力で小刻みに磨く方法が効果的です。

ご家庭の料理用スケールに歯ブラシを押し当てて、100~150gの力がどれくらいか確認してみてください。

(2)柔らかめ〜普通の硬さの歯ブラシを選ぶ

硬いブラシは歯肉退縮の大きなリスク。

柔らかいものを選ぶことで物理的なダメージを軽減できます。

(3)フロスや歯間ブラシを正しく使う

歯ぐきに無理に押し込むと逆効果です。

適切なサイズ・正しい動作を習得することが大切です。

(4)噛みしめが強い人はナイトガードの検討を

歯ぎしり・くいしばりは歯ぐき下がりの大きな要因です。

夜間用マウスピースは予防に有効です。

(5)研磨剤が少ない歯磨き粉を使う

これは特に重要です。

研磨剤入りの歯磨き粉は、ステイン除去には有効ですが、

毎日の使用で根面を傷つけたり、歯ぐきへの微細な摩耗を起こす可能性があります。

歯ぐき下がりがある方、知覚過敏がある方には、

以下のような歯磨き粉が推奨されます:

・研磨剤が少ないもの

・低刺激

・知覚過敏予防成分(硝酸カリウムなど)

・フッ化物配合で根面むし歯予防ができるもの

毎日の積み重ねが、歯ぐきの負担を確実に軽減します。


進行してしまった歯ぐき下がりの治療法

歯ぐき下がりがすでに進行してしまった場合、歯科医院での治療が必要です。

● 原因の除去(歯周治療・咬合調整)

歯周病治療や噛み合わせの調整は、根本治療として不可欠です。

● 知覚過敏の処置

薬剤の塗布、コーティング、レジン修復など。

● 根面むし歯の治療

根面は柔らかいため、早めの処置が大切です。

● 歯肉移植術(CTGなど)

下がった歯ぐきを回復させるための外科処置です。

・見た目の改善

・知覚過敏の改善

・今後の退縮抑制

といったメリットがありますが、適応には条件があります。

歯ぐきや骨の量、原因の除去ができているか、清掃状態などが重要な判断材料となります。


歯ぐき下がりを進行させないために歯科医院でできること

歯ぐき下がりは、セルフケアだけでは止められないことが多く、

歯科医院での定期的なチェックとプロケアが不可欠です。

・歯周ポケット検査

・レントゲンによる骨の確認

・プロによるクリーニング

・ブラッシング指導で磨き方を最適化

・噛み合わせのチェック

・ナイトガードの作製

これらの組み合わせによって、歯ぐき下がりの進行を抑えることができます。


まとめ:歯ぐき下がりは“止める治療”が最重要

歯ぐき下がりは、痛みがなく気づきにくい一方で、

進行すれば日常生活にも大きな影響が出る問題です。

・原因の多くは毎日の生活習慣

・自然に元に戻ることはほとんどない

・早期発見と早期対応で進行を止められる

・正しいセルフケア+定期的な歯科受診が最も効果的

歯や歯ぐきを一生守るために、気づいたその日から対策を始めましょう。


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