歯の神経の治療は痛い?
- 2022年6月1日
- むし歯・歯周病
「歯の神経を抜く」と言われて不安に思っているあなたへ
むし歯が痛くて歯医者さんに行ったら、「神経を取らないといけない」と言われた経験、ありませんか?
歯の神経を取るとはどういうことなのか?痛みはあるのか?今回は「歯の神経の治療」について解説いたします。
目次
・歯の神経の治療(根管治療)とは
・根管治療が必要になる時
・治療法の概要
・治療中の痛みの原因
・根管治療の成功率
・無菌的治療法(ラバーダム)について
歯の神経の治療(根管治療)とは
歯の中には「歯髄」という組織があります。いわゆる「歯の神経を抜く」と言うときの神経とは、この歯髄を指します。ここには神経だけでなく、血管も含まれています。むし歯などによって歯髄が細菌感染を起こしたり壊死したりしてしまうと、「歯の神経の治療」=「歯髄を取り除く治療」が必要になります。これを根管治療といいます。すでに根管治療を行ったにもかかわらず、再び根管が細菌感染してしまったり感染が残っていたりする場合には、再度の治療(=再根管治療)が必要となります。
根管治療が必要になる時
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歯髄炎
むし歯が進行し歯髄にまで達すると、「歯髄炎」になります。「炎」は炎症のことを指しています。その名の通り、歯髄が炎症を起こしている状態です。炎症が元の正常な状態に回復する場合は、歯髄を取り除く必要はありません。炎症が正常な状態に回復しない場合は根管治療を行う必要があり、この場合の治療は「抜髄」とも呼ばれます。症状は、冷たいものや温かいものがしみる、何もしていなくてもズキズキと痛みを感じる、などです。
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歯髄壊死
歯髄炎を放置すると、やがて歯髄が壊死します(=「歯髄壊死」)。冷たいものでの痛みが無くなったり、温かいもので痛みが誘発されるということがあります。そのほか、歯の色が黒くなってくることも特徴の1つです。この歯の変色は、外傷(転倒などで歯を強く打った場合)が原因で歯の神経が死んでしまったことによるものです。変色はすぐに起こらず、場合によっては数年後に変色することもあります。
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根尖性歯周炎
歯髄の炎症が骨の中まで進行すると、根尖性歯周炎と呼ばれる状態になります。レントゲン上では、歯の根の先に黒い像が見えるようになり、根尖病変と呼ばれます。一度根管治療を行った歯が根尖性歯周炎へと移行することが多いです。症状は「噛むと痛い」、「歯茎から膿が出る」、「歯茎に大きい口内炎のような腫れ物ができる」などです。
治療法の概要
根管治療で大切なことは、根管(歯髄が入っていた空間)内を無菌状態に近づけることと、根管内に新たな細菌を侵入させないことです。そこで、根管治療の際には『ラバーダム』と呼ばれるゴム製のマスクのようなシートを歯につけます。ラバーダムをした状態で、根管の清掃と洗浄を行い、体に害のない材料(ガッタパーチャ)で根管内をしっかりと封鎖します。こうすることで、細菌が根管内に再び侵入できなくなります。
治療中の痛みの原因
治療中の痛みの原因の1つは、麻酔が十分に効いていないことです。もともと歯の痛みがあった場合、麻酔が効きにくく、治療中に痛みを感じてしまうことがあります。このような場合には、麻酔を追加することや、麻酔してから効果がでるまで時間を置くことが有効です。
また、器具が歯根の中から外に出た際に、歯根を取り巻いている神経が痛みを感じることがあります。ですから、たとえ神経が壊死している場合の根管治療であっても、麻酔は必要です。
根管治療の成功率
スウェーデンにおいて、歯学部の学生が専門医の指導のもとで行った根管治療についての研究結果が報告されています。この研究によると、まず、根尖病変(歯の根の先に膿がたまった状態)のある歯は成功率が低くなります。さらに、すでに一度根管治療をおこなった歯であった場合、つまり再根管治療になるとさらに成功率は低くなります。
もし根管治療が失敗した場合には、抜歯や歯根端切除術といった外科的な処置が必要になります。歯根端切除術にはマイクロスコープや特別な器具が必要であり、歯内療法専門医のもとで施術を受けられることをおすすめします。
無菌的治療法(ラバーダム)について
根管治療は細菌を根管内に入れないことが大事ですから、ラバーダムは必要不可欠です。先進国の多くでは、歯科治療の基本として行われてきました。しかし、日本で導入している医院は極端に少なく、毎回きちんとラバーダムをする医院はわずか5%にも満たないのです。
日本の歯科医院の多くは、根管治療を保険内で行っています。そのこと自体は患者さんの費用負担の面で良いことかと思います。しかし、保険治療にかけられる費用には限界があることや、手間・時間がかかることなどがハードルとなって、ラバーダムをしない医院が多いというのが現状なのです。
以上、歯の神経の治療について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
根管治療においては、「痛みへの配慮」と、「無菌的処置」が大切です。
当院では、根管治療時の麻酔はもちろん、麻酔針を刺す際の痛みを軽減する「表面麻酔」も必ず行っています。ラバーダムも毎回使用し、根管治療の基本を疎かにいたしません。
もちろん、根管治療に至らないことがベストです。多くはむし歯が原因ですから、いま痛みが無い方は、痛みが出る前に予防処置を受けましょう。
痛みがある方も、そうでない方も、ご予約はこちら(予約サイト)からどうぞ。
参考文献
- Sjogren U, Hagglund B, Sundqvist G, Wing K.
Factors affecting the long-term results of endodontic treatment.
J Endod. 1990 Oct;16(10):498-504.