歯並びが悪い原因とは?
- 2025年8月19日
- その他
目次|歯並びが悪い原因とは?
2-1. 遺伝的要因(あごの大きさ・歯の大きさのバランス)
2-2. 生活習慣による影響(指しゃぶり・口呼吸・頬杖 など)
2-3. 永久歯の生え変わり時の問題(乳歯の早期喪失・過剰歯)
2-4. 歯ぎしりや食いしばりによる負担
2-5. 外傷や病気による影響
2-6. 食習慣
- むし歯や歯周病のリスク増加
- 発音や咀嚼への影響
- 見た目や心理的コンプレックス
- 幼少期からの生活習慣改善
- 定期的な歯科健診
- 矯正治療のタイミングを知る
1. はじめに:歯並びの悩みはなぜ多いのか?
鏡を見たときに「歯がガタガタしている」「前歯が出ている」「口元が前に出ている」と感じたことはありませんか?
歯並びの悩みは、見た目の問題にとどまらず、むし歯や歯周病のリスク増加、噛み合わせや発音への影響など、機能面にも直結します。
かつては「歯並びは遺伝で決まる」と考えられていましたが、現在では生活習慣や成長期の癖、永久歯の生え変わりのタイミングなど、さまざまな要因が複合的に関与していることが明らかになっています。
また、近年の脱・マスク生活から影響で「口元の意識」が高まり、歯並びやかみ合わせの相談を受けるケースも増えています。矯正治療は子どもだけでなく、大人にとっても身近なものになってきました。
本コラムでは、歯並びが悪くなる原因とその影響、そして予防や改善のためにできることをわかりやすく解説します。
2. 歯並びが悪くなる主な原因
2-1. 遺伝的要因(あごの大きさ・歯の大きさのバランス)
歯並びの乱れの代表的な原因は、顎の大きさと歯の大きさのアンバランスです。歯が大きいのに顎が小さいと、歯がきれいに並ぶスペースがなくガタガタに。逆に顎が大きく歯が小さいと、すきっ歯になることがあります。
2-2. 生活習慣による影響(指しゃぶり・口呼吸・頬杖 など)
指しゃぶりや口呼吸、頬杖などの癖は、成長期の歯並びや顎の発育に大きく影響します。特に口呼吸は舌の位置異常を招き、上顎の成長を阻害することで歯並びの乱れを引き起こします。
最近では「お口ポカン」と言われる習慣が話題になっています。口呼吸が続くと、歯並びだけでなく、いびきや睡眠の質、姿勢にまで影響を与えることが知られています。
2-3. 永久歯の生え変わり時の問題(乳歯の早期喪失・過剰歯)
乳歯期に隙間(発育空隙)がある方が、永久歯がきれいに並ぶために有利です。乳歯が早期に抜けたり、過剰歯があると、永久歯が正しい位置に生えることができず、ガタガタした歯並びになりやすくなります。
2-4. 歯ぎしりや食いしばりによる負担
歯ぎしりや食いしばりは歯や歯の周りの骨に過剰な負担を与え、歯周病を悪化させることで間接的に歯並びへ悪影響を及ぼします。就寝中はマウスピース、日中は食いしばりを防止する貼り紙を貼るなどの習慣形成が推奨されます。
2-5. 外傷や病気による影響
転倒やスポーツによる外傷で歯がずれると、そのまま骨と癒着して矯正で動かせなくなることがあります。また、乳歯の虫歯による早期喪失も永久歯の生え方に影響します。
2-6. 食習慣
特に現代の子どもたちは、昔に比べて硬い食べ物を噛む機会が減り、顎が十分に発達しにくいと言われています。ファストフードややわらかいパン・麺類が中心の食生活は、顎を大きく動かす機会を減らし、結果的に歯が並ぶスペース不足を招きやすくなります。
このような「食習慣」も、実は歯並びに密接に関わっているのです。
3. 歯並びが悪いことで起こりやすいトラブル
むし歯や歯周病のリスク増加
歯並びが悪いとお手入れが難しくなり、むし歯・歯周病菌が停滞しやすくなります。その結果、歯を失うリスクが高まります。実際に、歯並びが悪い人は歯並びの良い人と比べて歯を失う本数が多いという報告があります(参考文献1)。
発音や咀嚼(そしゃく)への影響
上下の前歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」などの不正な噛み合わせは発音に悪影響を及ぼし、食べ物を噛み砕きにくくします。偏った噛み癖が習慣化すると、顔の骨格の歪みにもつながります。食事中に「片側でしか噛めない」「すぐに飲み込んでしまう」という状態が続くと、胃腸への負担や消化吸収への影響も無視できません。
見た目や心理的コンプレックス
歯並びは口元の印象を大きく左右します。悪い歯並びでは笑顔に自信が持てなくなり、自己肯定感や人間関係に影響することもあります。就職活動や接客業などでは第一印象に直結し、心理的なストレスにつながることも少なくありません。
4. 歯並びを悪化させないためにできること
幼少期からの生活習慣改善
口呼吸や指しゃぶり、頬杖などの癖を早めに改善することが、健全な顎の成長に直結します。特に5~8歳は顎の成長にとって大切な時期で、生活習慣の改善が将来の歯並びを大きく左右します。
お口の定期メインテナンス
歯科医院で定期的なメインテナンスを受けていると、歯の生え変わりや顎の発育を確認できるため、トラブルを早期に発見できます。子どもだけでなく大人にも重要です。メインテナンスの間隔はむし歯・歯周病のリスクによって一人ひとりで大きく異なり、1~6ヶ月ごとの受診が推奨されます。
矯正治療のタイミングを知る
子どもは歯が並ぶスペースを確保するためにあごの成長を利用できるため、5~8歳(遅くとも10歳まで)の早期治療が効果的です。特にマイオブレースによる治療はこの時期の子どもには効果が高く、当院でも推奨しております。大人も矯正は可能ですが、むし歯・歯周病の治療や管理を行った上で始めることが大切です。最近ではマウスピース矯正の普及により、社会人や主婦の方も治療を受けやすくなっています。
5. よくあるご質問(Q&A)
Q1. 子どもの指しゃぶりは何歳までなら大丈夫?
→ 3歳頃までなら自然にやめることが多く影響は少ないですが、4歳以降も続く場合は歯科相談が必要です。
Q2. 永久歯が生えてこない場合はどうする?
→ 乳歯の早期喪失や永久歯の欠如などが原因の場合があります。レントゲンで確認し、矯正治療や将来を見据えた計画を立てます。
Q3. 大人になってからでも矯正はできる?
→ 可能です。顎の骨の成長を利用できないため治療期間は長くなる傾向にありますが、見た目の改善だけでなく健康維持のために矯正治療を選択する方が増えています。
6. まとめ:歯並びの原因を知り、早めの対策を
歯並びが悪くなる原因は多岐にわたり、見た目だけでなく健康面にも影響を及ぼします。
遺伝や成長の問題だけではなく、日々の食習慣や呼吸の仕方、ちょっとした癖が将来の歯並びに直結することを理解しておくことが大切です。
また、矯正治療は「美容目的」と誤解されがちですが、実際には咀嚼(そしゃく)や発音、むし歯・歯周病予防といった健康維持の面でも大きな役割を果たします。つまり歯並びを整えることは、見た目を良くするだけでなく「一生自分の歯で食べる」ための投資でもあるのです。
もし歯並びについて気になることがあれば、年齢にかかわらず早めに歯科医院で相談してみてください。専門的なチェックを受けることで、あなたやお子さんに合った最適な方法を見つけることができ、未来の笑顔と健康につながります。
監修:もりわき歯科 院長 森脇 一都
歯科医師として一般歯科から予防歯科、矯正相談まで幅広く対応。地域医療に根ざし、患者さん一人ひとりに寄り添った診療を心がけている。本記事は、歯並びに悩む方やお子さんの健やかな成長を願い、正しい知識を届けるために監修しました。
参考文献
金子幸生, 茂木悦子, 山口尊生, 山木貴子, 竹内史江, 野村真弓, 宮崎晴代, 平井基之, 松田一郎, 山口秀晴. 8020達成者の歯にみられた cervical lesion について. 歯科学報. 107(3): 303-314