歯科のレントゲンは本当に安全?被ばく量と撮影が必要な理由を歯科医が解説
- 2026年1月4日
- その他

目次
歯科レントゲンの被ばく量はどのくらい?日常生活・医科検査との比較
歯科レントゲンには種類があり、目的によって役割がまったく違う
なぜ日本の歯科医院ではバイトウイングがほとんど撮影されないのか
歯科のレントゲンはなぜ「不安」に感じられやすいのか
歯科医院で「レントゲンを撮りますね」と言われたとき、
「被ばくは大丈夫なの?」「何回も撮って問題ないの?」
と不安を感じる方は少なくありません。
特に、痛みがないときや、定期検診の場面では
「本当に必要なのだろうか?」
と疑問に思われるのも自然な感情です。
しかし、レントゲン検査は歯科診療の質を大きく左右する重要な検査です。
不安を感じたまま受けるのではなく、正しく理解したうえで納得して受けていただくことが大切だと、私たちは考えています。
歯科レントゲンの被ばく量はどのくらい?日常生活との比較
結論からお伝えすると、歯科レントゲンの被ばく量は非常に少ないものです。
たとえば、
・デンタルレントゲン1枚:数μSv(マイクロシーベルト)
・バイトウイング撮影:デンタル数枚分
・パノラマレントゲン1回:およそデンタル数枚分
これは、
私たちが日常生活で自然界から受けている放射線(自然放射線)
のごく一部にすぎません。
飛行機で東京〜沖縄を往復する、屋外で生活する、食事をする──
それらと同程度、あるいはそれ以下の被ばく量であることがほとんどです。
歯科レントゲンは、「被ばくが怖い検査」ではなく、非常に管理された安全性の高い検査なのです。
歯科レントゲンには種類があり、目的によって役割がまったく違う
一口に「歯科のレントゲン」といっても、実は複数の種類があります。
重要なのは、どのレントゲンを、何の目的で撮影するかです。
主に使われるのは次の3つです。
・デンタルレントゲン:1本〜数本の歯を詳しく見る
・バイトウイング:歯と歯の間のむし歯、初期変化の確認
・パノラマレントゲン:上下すべての歯と顎全体を一度に確認
それぞれ得意分野がまったく異なり、万能なレントゲンは存在しません。
パノラマレントゲンで「わかること」と「わからないこと」

パノラマレントゲンは、1枚で全体を確認できる便利な検査です。
親知らずの位置、顎の骨の状態、大きな病変の有無などを把握するには非常に有用です。
一方で、次のような重要な弱点もあります。
・初期〜中等度のむし歯はほぼ見つからない
・歯と歯の間のむし歯診断には不向き
・歯周病の細かな進行度評価は困難
・歯石の有無は基本的にわからない
つまり、「パノラマだけでむし歯や歯周病を正確に診断することはできない」のです。
むし歯診断に最も感度が高いバイトウイングの重要性

むし歯、特に歯と歯の間にできるむし歯は、見た目だけではほとんどわかりません。
この診断において、最も感度が高い検査がバイトウイングです。
バイトウイングは、
・初期のむし歯
・表面からは見えない隠れた病変
・治療が必要か、経過観察でよいかの判断
において、世界的に標準とされている検査方法です。
当院では、むし歯を早期に、正確に見つけるために、
バイトウイングを最も重要なレントゲン検査の一つと考えています。
なぜ日本の歯科医院ではバイトウイングがほとんど撮影されないのか
実は、日本ではバイトウイングをルーティンで撮影している歯科医院は多くありません。
その背景には、
・パノラマ1枚で済ませた方が時間的・経営的に効率が良い
・バイトウイングやデンタルレントゲンで全ての歯を撮影するのは手間がかかる
・教育/慣習として十分に重視されてこなかった
といった構造的な問題があります。
しかし、「医院側の都合」と「患者さんの利益」は必ずしも一致しません。
パノラマだけで診断を完結させてしまうことは、
患者さんにとって重要な情報を見逃すリスクを伴います。
レントゲンは毎回同じではない ― むし歯・歯周病・根の病気で異なる撮影間隔
レントゲン検査は、目的もなく一律のルーティンで撮るものではありません。
・むし歯リスクが高い方
・歯周病が進行している方
・歯の神経の治療後の経過観察が必要な方
それぞれで、適切な撮影内容・間隔は異なります。
当院では、
「なんとなく毎年撮る」「まったく撮らない」
といった考え方ではなく、目的とリスクに応じた撮影を重視しています。
当院が2年に1度デンタル10枚法を撮影する科学的な理由
むし歯は、数か月で急激に進行する病気ではありません。
レントゲン画像上で「変化」として確認できるようになるまでには、
一般的に1〜3年程度の時間がかかるとされています。
そのため当院では、
・予防/メインテナンスを継続している方
・むし歯リスクが低〜中等度の方
に対して、2年に1度を基本としてデンタル10枚法とバイトウイング撮影を行っています。

(デンタル10枚法とは、お口の中のすべての歯と歯ぐきの状態を、細かい変化まで見逃さないように10枚の小さなレントゲンで分けて確認する検査です。)
これは、
・不必要な頻回撮影を避ける
・前回との比較で確実に変化を捉える
という、科学的にも合理的な考え方に基づいています。
妊娠中・授乳中でも歯科レントゲンは本当に安全なのか
妊娠中・授乳中の方にとって、被ばくは特に心配な点だと思います。
歯科レントゲンは、
・撮影範囲が口腔内に限定されている
・防護エプロンを使用する
・被ばく量が極めて少ない
という特徴があり、医学的には必要性があれば問題ないとされています。
例えば、ADA(米国歯科医師会)では妊娠のどの時期でも、必要な歯科治療とレントゲン撮影は安全という立場を明記しています。
CDC(米国疾病予防管理センター)では授乳にリスクがない旨を明記しています。
もちろん当院では、
緊急性・必要性を慎重に判断したうえで撮影の可否を決定しています。
まとめ:被ばくの心配より大切な「見逃さない診断」という考え方

歯科レントゲンで本当に考えるべきなのは、
「撮りすぎかどうか」ではなく、
「必要な情報をきちんと得られているかどうか」です。
・むし歯を早期に見つけられるか
・歯周病の進行を正確に把握できるか
・治療後の経過を適切に評価できるか
そのために、適切な種類・適切な間隔でのレントゲン検査は欠かせません。
当院では、被ばく量を最小限に抑えながら、
患者さんにとって本当に必要な診断を行うことを大切にしています。
