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医療コラム

親知らずはどこで抜くべき?|もりわき歯科|芦屋駅すぐの歯科・歯医者

親知らずはどこで抜くべき?


― 一般歯科・口腔外科・大学病院、それぞれの役割と正しい選び方 ―

親知らずの抜歯について調べていると、

「歯医者で抜けると言われたけど不安」

「口腔外科を紹介されたけど、大げさでは?」

と悩まれる患者さんは少なくありません。

実は、親知らずは“抜くかどうか”以上に、“どこで抜くか”がとても重要です。

この記事では、欧米と日本の医療体制の違いも踏まえながら、親知らず抜歯における正しい考え方をわかりやすく解説します。


親知らずは必ず抜かなければいけないのか?

まず大前提として、すべての親知らずが抜歯の対象になるわけではありません。

・まっすぐ生えている

・上下で噛み合っている

・清掃ができ、むし歯や歯周病のリスクが低い

こうした場合は、無理に抜く必要はないことも多くあります。

一方で、

・斜めや横向きに埋まっている

・歯ぐきがかぶって炎症を繰り返す

・手前の歯をむし歯や歯周病にしている

といったケースでは、将来的なトラブルを防ぐために抜歯が推奨されます。


「どこで抜くか」が重要になる理由

親知らずの抜歯は、

簡単な処置から高度な外科処置まで、難易度の幅が非常に広い治療です。

・歯ぐきを切らずに抜ける

・骨を少し削る必要がある

・神経や血管の近くにある

この違いによって、求められる技術・設備・経験が大きく変わります。

そのため、「抜くかどうか」だけでなく、

「誰が、どの環境で抜くのか」がとても重要になります。


欧米における親知らず抜歯と専門分化の考え方

欧米の歯科医療では、専門分化が非常に進んでいます。

・一般歯科医

・口腔外科医

・歯周病専門医

・補綴(被せ物)専門医

・歯内療法(歯の神経の治療)専門医

それぞれの役割が明確で、

親知らずの抜歯も難易度によって担当がはっきり分かれています。

難しい親知らずは基本的に口腔外科が担当し、

一般歯科は無理に抱え込まず、紹介することが「質の高い医療」と考えられています。


日本の親知らず抜歯が抱える制度的な特徴(保険診療の前提)

一方、日本では親知らずの抜歯の多くが保険診療で行われます。

保険診療は、

・全国一律の点数

・難易度による価格差が小さい

という特徴があり、治療の「質」そのものが評価されにくい制度です。

その結果、

「抜けるならどこでも同じ」

「紹介される=たらい回し」

と誤解されやすい背景があります。


一般歯科で対応できる親知らずのケースとは

一般歯科でも、次のような親知らずは十分対応可能です。

・完全に生えている

・歯根の形が単純

・神経や血管から距離がある

・炎症や感染が落ち着いている

こうしたケースでは、

普段からむし歯・歯周病治療を行っている一般歯科の繊細な処置がむしろ適していることもあります。


口腔外科での抜歯が適している親知らずの特徴

一方、次のような場合は口腔外科での抜歯が望ましいと考えられます。

・骨の中に深く埋まっている

・神経(下歯槽神経)に近い

・大きく骨を削る必要がある

・全身疾患がありリスク管理が必要

これらは、外科的経験と万一の対応力が求められるケースです。


一般歯科医が難抜歯を行うケースをどう考えるか

日本では、

過去に口腔外科で勤務した経験を持つ一般歯科医が、難抜歯を行うこともあります。

これは一概に否定されるものではありません。

ただし重要なのは、

「今もその環境・経験・体制が維持されているか」という点です。


口腔外科の「得意」と一般歯科の「得意」は違う

口腔外科医は、

・抜歯

・外傷

・腫瘍

といった外科処置を日常的に行っています。

一方で、むし歯治療や歯周病治療は、

一般歯科ほど日常的に行わないことも多いのが実情です。

良く言えば「手早い」、

悪く言えば「繊細さに欠ける」と感じる患者さんの声があるのも事実です。

これは優劣ではなく、役割の違いです。


大学病院・総合病院で抜歯する場合の実情と安心材料

大学病院などでは、研修医が担当することもあります。

不安に感じる方もいらっしゃいますが、実際には、

・必ず指導医が監督

・緊急時の医科連携が万全

・出血や全身トラブルへの対応力が高い

という大きな安心材料があります。

また、保険診療では医師を指定できないのが原則ですが、

これは医療機関の裁量権によるものです。


「紹介される=悪い治療」ではないという考え方

「ここでは抜けないと言われた」

「他院を紹介された」

これは決して、

治療を断られたわけでも、見放されたわけでもありません。

むしろ、

安全性を最優先した誠実な判断といえます。


親知らずを抜く前に患者さんが知っておきたい判断基準

親知らずの抜歯では、

・難易度

・リスク

・医院の体制

これらを総合的に判断することが重要です。

「近いから」

「今日すぐ抜けるから」

だけで決めるのではなく、長期的な安全性を重視しましょう。


当院が大切にしている親知らず抜歯の考え方

海外では、親知らずは難しさによって一般歯科と口腔外科で役割分担されています。

当院でも、その考え方を大切にし、安全性を最優先して判断しています。

無理に自院で抜歯を行うことはありません。

患者さんにとって最も安心できる選択肢をご提案することが、私たちの役割だと考えています。


まとめ

親知らずの抜歯は、

「抜くかどうか」よりも

「どこで、誰が抜くか」が重要です。

迷ったときは、ぜひ一度ご相談ください。

納得したうえで治療を受けることが、何より大切です。


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